日本財団 図書館


 

これらの結果から船体構造においては、30mm程度の長さがき裂損傷として認識されるき裂寸法の代表値であると考えられる。
点検プログラムの策定に際しては、検査性に応じた発見可能代表長さを考慮して、検査期間の設定を行う必要がある。また、重要度の高い部材については、検査性を改善してき裂が小さい間に発見できるような配慮も必要となり、本例のような知見は重要である。
4.4保守・点検技術の高度化に向けて
保守・点検技術の高度化に関して、本SRの研究により得られた成果は、以下のとおりである。
(1)き裂伝播解析手法の実用化により、限界状態に至るまでの寿命予測をべ一スとした保守。点検体制の基盤が整った。
(2)限界状態、損傷の重要度等の概念に基づく新しい保守・点検シナリオの方向を示すことができた。
(3)検査性に関するアンケート調査から、船体構造における発見可能なき裂長さの代表値の試案を提言できた。
(4)船体の代表的な構造についてき裂伝播解析を行い、実構造における応力の再配分や荷重様式の違いの影響等を含めたき裂伝播の特徴を把握することができた。また、今後さらに詰めていくべき課題として、以下の点が挙げられる。
(1)き裂損傷データの系統的な蓄積/フィードバック体制を確立するとともに、船種毎の重要箇所を、その構造部位の限界状態との関連において明確化する。
(2)各構造部位に対するき裂伝播解析事例を充実するとともに、解析結果と損傷データとの対比により、き裂伝播解析手法のさらなる高精度化を図る。
(3)実船における検査性の難易度、限界状態の重要度に基づいた損傷の重要度の定量化を模索する。
(4)損傷の重要度に基づいた保守。点検ガイダンスの策定を海事関係者のコンセンサスのもとに推進する。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION